サンビセンテ・ロック

先日のことです。ボートがキャンセルになり、同行者の神様とふてくされてビーチを徘徊していました。熱帯性低気圧のせいだったんですが、この時点ですでに神様は7本もグロットを潜っていたので、何か新鮮なものを探していたのでした。 通り過ぎざまに、気になるビーチがありました。サイパンの東南に位置します。実はラウラウビーチを目指していたのですが、虫が騒ぐのか「ちょっと」行ってみたいと神様が不意に『お告げ』をボソッと・・・。車を停めて浜に降り立つと、「うーん」「ほーぉ」「なーんか」などと意味不明な独り言ばかりです。曇っているし、堆積した土砂を見ても、それほど強い期待があったわけではなかったのでした。

しかし、2人はいつの間にか海パンにブーツ、マスクをぶら下げて波間に近寄っていました。この場所は、その両端に上がる波しぶきに比べ、水面の様子が不規則に波打っています。そうです、珊瑚礁の切れ目なので水路になっている可能性があります。こういう場合は、オブジャンのようなリップカレントがないか用心が必要です。   素材自体が浮くロープを肩にかけた私は、川岸にロープを結んで流れを楽しむようなことを想像しながら岩にそのロープを結びました。ロープに手を添え流れに乗ってみると、スノーケルが揺れることもなくまた急流に生育しやすい火炎サンゴも見られません。沖側のロープ端までたどり着くと、水底にはそのあたりで見たこともないダイナミックな地形がうっすらと見えました。 ブダイの群れが地形を楽しむように往復しています。こういった岩礁地帯にいがちなゴマニザの姿も見えず急激な波のクラッシュもなさそう。水路が終わると、直ぐに深さが5~6mあるようなのです。うーん、これは不思議だ!その数日前の天候から透明度は落ちていたので、もっと見たい!フル装備で潜ってみてみたい!という衝動に駆られました。ロープを手繰って戻る途中も、その水路に立ち上がってみたり、素もぐりで海底に這いつくばったり、流れを確認しました。急激な環境変化のないことを確認できましたので、私たちはスクーバ器材を装着するため車に戻りました。

「どうしましょうか」というセリフは2分おきに・・・。回答のないまま、準備をはじめる神様。いつものことながら、この直前の準備の時間はさりげなさを装う神様でした。期待を大きくしすぎず、中断する判断も巡らせつつ準備をするのです。
  実際にタンクを背負ってエントリーすると、巨岩が林立しています。枯れ木などもたまる吹き溜まりの個所がいくつかあり、養分を求めて動きの鈍い魚もいそうです。コース取りは左に左にと岩をたどっていきます。どうしてなのか、ここはミノカサゴが多い。しかもまだ大人になりきれていないものがひれをたたんで地面に寝そべっています。私は水底を這い、神様は中層から岩の横穴を確認、自然に出来た役回りです。

折り返し地点でコクテンフグをからかい、戻る途中で珍しい姿を発見。オトヒメエビがおなかにいっぱい卵を抱えていました。カメラは中に入らず撮れませんでしたが、その姿を真似して、まさにエビ反る神様に吹き出しながら、横穴探索を続けて戻りました。結局50分近い潜水となり、帰路に大きなえぐれがそばにあったので最後の岩を左回りしてみました。エキジットポイントへ戻るつもりだったですが、岩が立ちはだかり、そこは行き止まり。やむなくもとの道へ戻りました。(行きの道は左手に左手にだったので、帰りは右手に右手に、の基本に戻りました。)先に設置しておいたロープを見つけ、さぁ上がるかというところ、なぜか奥まった岩のハザマに惹かれてしまい、神様の了解をとり、5mほど進入。結果、沈殿していた足ひれを見つけてからエキジットです。

今回のダイビング・プロフィール

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